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更新料を支払う条項は消費者契約法違反か

 本日の最高裁判決は,本日,平成23年7月15日第二小法廷判決です。

 以前から大きな注目を集めていた分野について,最高裁判所がついに判断を下しました。

 事案は,Xが,Yから建物を,期間1年,賃料月額38,000円,更新するごとに更新料として2か月分の賃料を払うなどの約定で借り受けたところ,Xが更新料の約定は消費者契約法に違反するから支払った分を返せと,Xを相手に裁判を起こしたというものです。

 1審の京都地裁,2審の大阪高裁(H22.2.24)はXの主張を認め,更新料条項は消費者契約法10条に違反するとしました。

 ちなみに消費者契約法10条というのは「消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって,民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは,無効とする。」という条文です。

 大阪高裁は,更新料の法的性質について「趣旨不明瞭な,一種の贈与」と認定し,賃借人には更新料の金額を交渉する余地はなく,このような性質を知っていれば消費者である賃借人は支払いたくなかったはずだから,Yは一種の誤認状態におかれたまま契約を締結したものであると認定し,上記のように判断したのです。

 そこで出たのが最高裁判決です。

 

(判決要旨)

 更新料は,賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり,その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると,更新料は,一般に,賃料の補充ないし前払,賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有する

 (中略)

 賃貸借契約に一義的にかつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない

 

 われわれ関東の人間からすると,賃貸借契約の期間が1年で,その都度,賃料の2倍の更新料を支払うというのは,やや高額に過ぎる気がしないでもないですが,最高裁は,本件のケースでも「特段の事情」には該当しないと判断しました。最高裁が考えている「賃貸借契約が更新される期間等に照らし(更新料が)高額に過ぎる」場合(特段の事情)とは,いったいどういう場合を想定しているのか,やや疑問がないわけではありません。

 そうはいっても,更新料については,関西を中心に裁判所の判断が分かれており,実務でも不安定な状態が続いていたところでしたので,今回の最高裁判決が出されたことで,とりあえず多くの大家さん(消費者的立場の人も多いはず)はほっとしているでしょう。

 

最高裁判決

2011.07.15

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