よこはま法律コラム よこはま法律コラム

契約締結段階の義務違反は債務不履行か

本日の最高裁判決は,平成23年4月22日第二小法廷判決です。
事案は,破綻した信用共同組合Yに,破綻の1年半前に500万円を出資したXが,出資の当時Yの理事は破綻の危険性があることを十分に知りながら,これを黙ってXに出資させたとして500万円の損害賠償などを求めたものです。
原審の大阪高裁は,Yが経営破綻の現実的な危険があることを説明しないまま出資を勧誘したことは,信義則上の説明義務違反であるとして,不法行為責任のみならず,出資契約上の付随義務違反として債務不履行も成立すると判断しました。
そこで,出たのが最高裁判決です。

 

(判決要旨) 契約の一方当事者は,契約締結に先立ち,信義則上の説明義務に違反して,契約締結の可否に関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合であっても,相手方が契約締結により被った損害につき債務不履行責任を負わない

 

契約締結段階での当事者の義務違反行為については,債務不履行なのか不法行為なのかは古くからある問題ですが,この点(法的性質の問題)に言及した最高裁判決は始めてです。
原審は,「およそ社会の中から特定の者を選んで契約関係に入ろうとする当事者が,社会の一般人に対する不法行為上の責任よりも一層強度の責任を課されることは,当然の事理」と述べて,無関係の市民間をも規律する不法行為のみならず出資契約上の付随義務違反(債務不履行)も成立するとしました。これまでは,このように考える学説も多かったと思います。
これに対して最高裁の理屈は,相手方の義務違反によって本来であれば締結するはずのなかった契約(本件では出資契約)から,契約締結段階の義務が付随的に発生するのはおかしい(背理だ)。一種のトートロジーというか,言われてみれば確かにそうです。
非常にアカデミックな問題ですが,不法行為責任の時効は原則として3年なのに対して債務不履行の場合は5年~10年になりますので,実務上は,どちらの責任が成立するかは重要です。

最高裁判決

2011.07.08

よこはま第一法律事務所

  • 弁護士紹介
  • 業務内容
  • ご利用案内
  • 弁護費用について
  • よくあるご質問
  • アクセスマップ
  • よこはま法律コラム

tel 045-228-2088

↑ページトップへ